合理的配慮(reasonable accommodation)

 2006年12月13日の第61回国連総会において採択された障害者の権利に関する条約の中に合理的配慮(reasonable accommodation)という言葉が使われています。アメリカでは19世紀の判例にも見られる言葉で、一定の理にかなった措置・調整を意味する熟語と捉えられているようです。

障害者の権利に関する条約(Convention on the Rights of Persons with Disabilities)の第2条「定義」において、

「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。
“Discrimination on the basis of disability” means any distinction, exclusion or restriction on the basis of disability which has the purpose or effect of impairing or nullifying the recognition, enjoyment or exercise, on an equal basis with others, of all human rights and fundamental freedoms in the political, economic, social, cultural, civil or any other field. It includes all forms of discrimination, including denial of reasonable accommodation;

「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。
“Reasonable accommodation” means necessary and appropriate modification and adjustments not imposing a disproportionate or undue burden, where needed in a particular case, to ensure to persons with disabilities the enjoyment or exercise on an equal basis with others of all human rights and fundamental freedoms;

「ユニバーサルデザイン」とは、調整又は特別な設計を必要とすることなく、最大限可能な範囲で全ての人が使用することのできる製品、環境、計画及びサービスの設計をいう。ユニバーサルデザインは、特定の障害者の集団のための補装具が必要な場合には、これを排除するものではない。
“Universal design” means the design of products, environments, programmes and services to be usable by all people, to the greatest extent possible, without the need for adaptation or specialized design. “Universal design” shall not exclude assistive devices for particular groups of persons with disabilities where this is needed.

「合理的配慮」の「accommodationとしての配慮」とは、 辞書によれば「融通」や「貸し付け」或いは「和解」や「調停」というニュアンスを持った言葉で、それを踏まえて「住む(宿泊する)ための下宿・アパート・ホテル」を指し示す言葉でもあり、「便宜」や「助け」という意味があります。基本的には『相互の合意や契約に基づく「便宜」や「助け」』というような意味を持つ言葉が「配慮(accommodation)」です。

 それに対して同じような言葉として「modificationとしての配慮」があります。これは「緩和」や「手加減」というニュアンスがある言葉で「変更」や「修正」の意味で使われたり、或いは「適応」や「特別扱い」と訳される言葉です。

 
「accommodationとしての配慮」と「modificationとしての配慮」との意味の差異を考えると、「合理的配慮(reasonable accommodation)」とは、あくまでも「障害(disability)」に対して、特別扱いするのではなくて、障害による障壁を取り除いて、或いは双方の合意の下に合理的な融通や助けを行うこと・・・これが合理的配慮の意味です。

 「合理的配慮(reasonable accommodation)」と似て非なるものとしての「不合理的な配慮(unreasonable modification)」とは、合理性がない感情論または責任回避として、一方的に特別扱いをすること、そもそものルールを無理矢理に修正或いは拡大解釈して手加減をすることです。

 あくまでも「合理的配慮」は「契約」であり「権利」であり、必要性と適切性を合理的に説明できる責任(accountability)の上で双方の合意・契約の下で行われる融通や助け(help)であって、一方的な特別扱いでは決してないということです。

「授業の評価」に関して検討する中で、滋慶医療大学院大学の岡耕平先生の「工業系高校における合理的配慮」の講演(平成28年日本工業技術教育学会近畿支部研究大会、Dec10,2016)の趣旨が思い出されます。岡先生は、進路多様校で実際にフィードワークされる中で、ごく普通の無気力な生徒に対する「合理的配慮(reasonable accommodation)」を装う「不合理的な配慮(unreasonable modification)」が横行していることを経験されたようです。ノート点、出席点の名の下で嵩上げされた成績、観点別評価を隠れ蓑にして、教室に座っているだけ、ただただ黒板をノートに書き写すだけの「作業」、プリント類の提出するだけで、主観的に「興味や関心がある」、「学ぶ姿勢が見られた」と加点を重ねることによって、ほんとうの生徒の「わかる」とは乖離したハリボテの成績が一人歩きして単位修得・卒業の根拠となってしまう・・・。ほんとうの生徒の実力を測っていない成績は、生徒の学力の尺度として不適切とも言えます。

 基礎学力を考える時に、「不合理的な配慮(unreasonable modification)」が『学びの場』を破壊しているのかもしれません。