世界図絵

17世紀のチェコの教育者であったコメニウス(Johannes Amos Comenius)の世界図絵(Orbis Pictus)は,一般に「世界最初の子供向けの絵本」と言われています.
 

 言葉(言語)だけでものごとの概念を指し示そうとしていた本と違って,絵(非言語,視覚)を使って,いろいろなものごとの概念を指し示そうとしている点では,画期的な本とも言えます.現在の視聴覚教育やICTの源流とも言えます.

 コメニウスは,現在の学校教育の礎を構想した教育者と言われています.「同一年齢・同時入学・同一学年・同一内容・同時卒業」は現在の学校に骨格であり,人びとがすべての知識を共有することを目指した教育者でした.

 手元にある追手門大学の井ノ口淳三先生の日本語の冒頭,「読者への序言」の中で,

『無知にとっての薬は学識です.それは学校で若人にもたらされるべきものです.』

 原著では,各ページの上に絵(イラスト)があり,下に説明の言葉があるレイアウトになっており,現代のネットでよくみられるホームページやブログの形式が,これを継承しているとも言えます.手許の文庫本版では,右に言葉,左にイラストという構成です.

 表紙は,最初の項目「入門」です.

教師:こちらへおいで,かしこくなるのは勉強しなければらなないよ!
生徒:かしこくなるとはどんなことですか?
教師:必要なすべてのことを正しく理解し,正しく行い,正しく語ることだよ.

 ・・・このようなやりとりで始まります.

 「感覚」の項目では外部感覚として五感の眼,耳,鼻,舌,手を挙げており,内部感覚として,共通感覚,想像力,記憶力を挙げています.イラストは5つの感覚器官と,その中心に脳を配置しています.

「学校」の項目,説明文は,

学校は若人の心が徳へと形成される仕事場です.そしてクラスに分けられています.

 11と12は,不真面目な生徒に対して鞭打っているイラストです.

抽象的な「文辞」の項目もあります.

左端0から言葉,修辞,詩や歌,そして右端が音楽です.当時の教養(liberal arts)は現在とは違っているようです.

 現在の日本だと,国語,英語,数学,理科,社会となって,文芸や音楽は入らないのかもしれません.